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厚労省の大麻検討会とりまとめ文書は、誰に思いを寄せたものなのか<ウェブ記者会見の声明文>

2021年6月11日に、厚生労働省の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」は、第8回目の会合を開き、最終報告書を取りまとめました。その内容に対して、私たちは次の声明を発表するとともに、ウェブ上の記者会見を開きました。声明は以下の次のとおりです。

私たちNYANは、クスリを使うことがある人の立場に立って、権利擁護をおこないます。そのひとつとして、この国の薬物対策が、人間の尊厳と権利、そして健康と福祉を大切にするものになってほしい、と声を上げる活動をしています。

さきほど、政府のみなさんが専門家の方たちと「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を開き、とりまとめの文書が出されました。その文書に対して、私たちはいますぐに声をあげなければいけないと考え、この場を設定しました。

私たちはこれまで十年以上に渡り、何百人もの薬物依存症を抱える本人とその子どもや家族たちといっしょに過ごしてきました。その人たちの立場でお伝えしたいです。

今回、このとりまとめの文書を読みまして、悲しく思いました。このやり方では、ますます生き延びるのが困難になると思うからです。どうしたらそのことを、政府や専門家の方たちにわかってもらえるのだろう、と嘆きたい気持ちです。

先月、厚生労働省の勉強会に呼ばれて、依存症の仲間と2人で講師としてお話をしました。そのとき、私たちは厚生労働省のみなさんに御礼を伝えました。当事者の仲間は、幼い子どもがいて処方薬がまったく止まらない状態のとき、出会った地域の保健師さんと、子育て支援の人と、児童福祉の人たちの親切な支援を受けて、そして依存症回復支援施設につながって回復していったのです。どの人たちもすべて厚生労働省が管轄する地域支援の現場の人たちでした。だから私たちは感謝の気持ちを伝えたかったのです。

ところが、今回のとりまとめの文書には、大変悲しくなりました。そこには大麻を中心に「薬物使用」や「薬物乱用」について書かれていますが、「人」について書かれていると感じることができなかったからです。この文書はいったい誰のためを思って考えられた文書なのだろうかと思うのです。

これは「薬物使用」や「薬物乱用」に関連する分野で、専門的な知識はあるけれど、当事者という「人」とのつながりを持たない人たちが、自分たちから見るとこうあるべきだと押し付けたい方法を、とりまとめたもののように思えます。

検討委員会のなかで、ほとんどの委員は大麻使用罪の創設に賛同されました。そして私たちのなかで、日常的に当事者とつながりがあると感じられる委員は本当に数名で、その人たちは創設に反対していました。

この文書のとりまとめにおいて、大麻使用罪の創設に対しても、再乱用防止対策にしても、依存症の本人や家族、そして地域で支援している人たちの要望をご存知でありながらも、それらは採用されません。

こうなったとき、私たちは力を奪われたと感じます。私たちの声よりも、私たちとつながりを持たない、専門家という肩書の方たちの声が採用されるからです。そしてその結果、社会のなかで生き延びるのが困難な人たちが増えても、誰も責任をとらず、私たちが一生懸命に人とお金をかき集めて、支えることをすることになります。

とりまとめの文書を読んで、私たちがホッとする、安心する、生き延びることができるように思える、そうした内容になっていないことが悲しいです。

私たちの声を大切にうけとめていただければ嬉しいです。

記者会見では、5/27に厚労省に要望書を提出した4人に加え、NPO法人リカバリー代表の大嶋栄子さんと、千葉大学大学院社会科学研究院教授の後藤弘子さんにもご登壇いただき、6人全員がそれぞれの立場、専門からとりまとめ文書に対する考えを伝えました。どれも共通することは、この声明に書いてあるとおり、当事者たちの声を聞いてほしい、「人」を大切にしてほしいという要望です。

今後も、社会内で弱い立場に追いやられやすいさまざまな当事者たちを支援する団体との連携を拡大し、政府、政治家らへの働きかけを続けていきます。

この声明文が取り上げられたメディア記事がこちらです。
BuzzFeed News 「大麻検討会とりまとめ「使用罪」創設については反対意見も明記 大麻医薬品使用にも道を開く提言」