クスリ・ドラッグ・薬物のこと、何でも話せる“OKチャット”はこちら

エイズ予防指針「薬物乱用・依存者」の表現を改正

    2025年11月に「エイズ予防指針」が改正されました。

    エイズ予防指針(後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針)は、厚生労働省がHIV/エイズ対策をどう進めるかを示した公式のガイドライン 、つまり国としての基本方針をまとめたものです。

    これまでの指針では重点的な対応を必要とする個別施策層として「薬物乱用・依存者」という表現が用いられてきました。

    「乱用者」 は悪人という差別を助長
    「依存者」 は「薬物使用=依存」という偏見を助長
    人権が軽視される表現が用いられていて、支援の妨げになってしまう…

    私たちは、当事者(薬物を使用することがある人)と協働して、要望書を作成し、提出しました。→私たちの要望書の提出に関する記事はこちら

    ❶ 「薬物を使用することがある人」またはそれに近い表現に
    ❷ 「注射薬物使用者」も改正を(パブリックコメントで)

    今回の改正でこうなりました

    薬物乱用・依存者→医療目的以外で薬物を使用することがある者
    注射薬物使用者→医療目的以外で注射により薬物を使用することがある者
    「医療目的以外で」が加えられたのは、 「薬物」が医薬品等も含むため

    当事者の仲間の声

    新しい表現は「⼈の⾏動」と「⼈の尊厳」を切り離して考えるための出発点だと捉えました。そして、当事者としてこの表現ではじめて⽇本社会で「⾃分の存在が理解されようとしている」と感じました。

    ⾔葉の選択が政策の倫理的基盤を映す鏡なら、今回の表現の改正は、国が科学と⼈権の両⽴を志向しているという意思表⽰と受け⽌めたいです。

    とはいえ、説明的で硬直的な表現だなとも感じます 。当事者である私は、⾃らを「医療目的以外で薬物を使⽤することがある者」ではなく、「生きているひとりの⼈」だと認識しています 。私は使⽤という⾏為で定義されることがあったとしても、社会との関係性の中で⽣きています。薬物使用の有無に関係なく誰でもそうであるように。

    政策・法令・論文・メディアなどどこでも、当事者を傷つけない尊重された表現、例えば「薬物を使⽤することがある⼈」などへの置き換えが進むことを願ってやみません。

    この改正が政策に入る意義

    • この改正に当事者の声が反映された。
    • エイズ予防指針だけでなく、日本の薬物政策にでてくる当事者を表現する主な用語は、 「薬物乱用者」 「薬物依存者」 「薬物依存症者」 。ここに「医療目的以外で薬物を使用することがある者」という表現が日本政府の用語として初めて加わった。

    予防指針には他にもこんな改正が

    • 人権の尊重の項目が以前は「第6」から「第1」の位置付けで記載
    • U=U(Undetectable=Untransmittable)が指針の理念に初めて記載
    • PrEP(曝露前予防)が有用であるとして初めて記載
    • GIPA(Greater Involvement of People Living with HIV、当事者主体の参画) 、つまり政策デザインの協力者ではなくパートナーとして初めて記載
    • ケアカスケード(95-95-95)も数値目標が初めて記載

    当事者の声、市民団体の継続的な働きかけによって実現しました。
    支えてくださった方々に心から感謝しています。

    この記事を配布用にA4サイズにまとめました。こちらからダウンロードできます。↓