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報告:国連の京都コングレスに参加

刑事司法分野において国連最大の会議である「第14回国連犯罪防止刑事司法会議」(京都コングレス)が、日本で開催されました。このコングレスは5年に一度開かれており、今回の京都での日本開催は1980年以来、半世紀ぶりということです。本来は1年前に予定されていたものが、コロナ禍により延長され、今年の3月7日に開幕しました。

NYAN事務局長の古藤は、2日目のサイドイベントにスピーカーとして参加しました。イベントは、若年層を中心とする非行や犯罪の予防のための家族介入をテーマにしたものです。京都コングレスを主催する国連機関がUNODC(国連薬物・犯罪事務所)で、そのUNODCの予防・治療・回復セクションがこのイベントを企画し、スピーカーとして声を掛けていただきました。イベントでは、まずUNODCの専門家により、地域社会における家族介入について、UNODCが開発したいくつかのツールをもとに発表がありました。若年層の薬物使用行動や犯罪・暴力の背景には、社会的不平等や教育達成度などの社会的な脆弱性があることを重要視し、家族の心理・身体・社会的な福祉の促進をポイントにデザインされたものです。

NYANは、日本における家族プログラムの実践例の一つとして、ダルク女性ハウスがおこなってきた母子プログラムを紹介しました。ハウスは約30年前に日本で初めて、女性のための薬物依存症回復支援施設として開設され、さまざまな女性当事者に関わってきました。そのなかで、子どもたちへの支援を含めた家族介入をしないわけにはいかない、そして一度それを始めたら止めることはできない、と長年取り組んできた活動を、僭越ながら発表いたしました。

女性の薬物使用の背景には、ジェンダーの不平等、ジェンダーに基づく暴力など、さまざまな社会的な要因が強く影響を及ぼしていることが国際的に指摘されています。そして、そうした家庭の子どもたちもまた社会的な脆弱性が高く、非行行動などのリスク要因が複数重なる傾向にあります。ダルク女性ハウスでは、当事者グループのなかで安心・安全に過ごすことができる場をつくり、日々、母親たち・子どもたちを迎え入れ支えています。母子プログラムの内容は、こちらの書籍などでも触れていますので、よろしかったらぜひご参照くださいませ(出版社にリンクしています)。
「その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち」(医学書院)
「ひとりでがんばってしまうあなたのための子育て本ー「ダルク女性ハウス」から学ぶこと・気づくこと」(ジャパンマシニスト社)

このセッションはたまたま「国際女性デー」(3月8日)に開かれたのですが、UNODCのファシリテーターが、地域で女性とその子どもたちを粛々と支援してきた女性ハウスの活動は、まさにこの日にふさわしいという感嘆のコメントを、ダルク女性ハウスのスタッフに向けて寄せてくださったことが、とても嬉しかったです。

3月7日にこのコングレスが開幕した際には、オープニングのセレモニーで数名の国連代表たちによるスピーチがありました。彼らのスピーチのなかで、現在世界レベルで取り組むべき犯罪として、テロリズム、武器の密輸、マネー・ローンダリング、人身売買、サイバー犯罪などの組織犯罪と汚職・贈賄が挙げられました。一方で、薬物犯罪を挙げる人はいませんでした。またこのコングレスでは、合計130以上のセッション・イベントが企画されましたが、そのなかでトピックにdrugsを入れているものはわずかに4つだけでした。

国連では、薬物問題については国連麻薬特別総会(UNGASS)を別に開いており、こちらは約10年(不定期)に一度、直近では2016年に開催されました(NYANも政府代表団顧問として参加しました)。つまり、薬物取引は犯罪防止・刑事司法の立場からは、主たる国際的な犯罪という位置づけにはもはやランクインしないにもかかわらず、この犯罪防止・刑事司法会議を主催する国連機関の名称がUN office on Drugs and Crime(国連薬物・犯罪事務所)と、機関名にDrugを付しているのです。それゆえ、諸外国の市民社会のなかからは、薬物問題でもとくにマイナーな事象(使用、所持に限らず譲渡、譲受、製造、密輸など)は保健や貧困の問題としてWHOなどが主体となり、そして組織犯罪という側面ではもはや他にもっと重要視されているものがあるのであれば、UNODCという名称・組織編成が実態にそぐわなくなってきている、という声が強まっており、あらためてそのことを実感します。

国連のなかで薬物問題についてはCND(United Nations Commission on Narcotic Drug)というセクションが毎年会議を開いて議論しています。NYANはウィーンの国連事務局内のNGO連盟に加入し、そしてこれまでに数回ウィーンでCNDにオブザーブ参加してきました。今年はこの4月に本会議がウェブ開催される予定になっています。薬物使用がある人の健康と福祉の向上のための国際的なアドボカシー活動において、CNDの動向にも注目しています。